因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
そして数日後。俺は両親ともに不在の隙を狙い、学校帰りの和華を自宅の香間に招いた。
香間に入る際の所作には細かく決まりごとがあるが、それを無視して畳に上がる。
そして、床の間の脇に飾られた乱箱を手に取り、和華の前で香道具を広げた。
「わぁ……綺麗」
畳の上にぺたんと横座りをした和華が、乱箱から出てきた香道具の数々に、嘆息する。
香道具には蒔絵が施されているので、その美しさに見惚れているのだろう。
彼女の反応を見ているだけで、次期家元という自分の立場が誇らしく思えて、俺はますます図に乗って灰手前を始めた。
火道具の中から火筋と呼ばれる金属製の箸を手に取り、小型の電熱器の上に香炭団をのせる。
全体に赤々と火が付くのを待っている間、和華は生き物でも眺めているかのように、小さな炭団を見守った。
「なかなか赤くならないね」
「……じきに火が回る」
俺がそう言っても、和華は真剣な顔で電熱器から目を離さない。
彼女がこちらを見ていないのをいいことに、俺は火筋で炭団を転がす手を止め、和華に見入った。