因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 どんなに成長しても変わらない、澄んだ瞳。それを縁取る睫毛は長く、うっすらと色づいた唇には、大人の女性の真似事でなにか塗ってあるようだ。

 もう子どもではないがまだ大人でもない、十四歳の彼女のアンバランスな魅力に惹かれ、胸の奥が切ない疼きを覚えた、その瞬間――

 電熱器の上の炭団が、パチン、と激しい音を立てて爆ぜた。

「きゃっ……!」

 続けて和華が微かな悲鳴を漏らし、畳に両手と尻もちをつく。

 我に返った俺が和華の方を見ると、彼女の額に真っ赤な火傷が。

「痛い……もしかして、火の粉が飛んだのかな?」

 自分では見えない額にそっと指先で触れ、呑気に呟く和華。

 しかし、火の粉というよりは爆ぜた炭の欠片が直撃したらしく、火傷の大きさは直径二センチほどあった。

 とても痛々しいその傷に、全身から血の気が引く。と、同時に頭の中に父の声が流れた。

『光圀、あまり近くで見るんじゃない。炭は急激な温度上昇で〝爆跳(ばくちょう)〟することがある。目の中に火の粉でも入ったら大事だ』

 そう言い聞かされていたのは幼い頃だとはいえ、忘れていたでは済まされない。

 自分がいかに取返しのつかないことをしてしまったかに気づき、目の前が真っ暗になる。

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