因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「待って、今出ていったら見つかっちゃうよ」
「いいんだ。隠そうとも思っていない。それよりきみの火傷を医者に――」
「病院なら自分で行ける。それより、光圀くんがお父さんに怒られて家元になれなくなっちゃったら、そっちの方が大変だよ。私なら大丈夫だから、ね?」
「でも……」

 俺が難色を示すと、和華はますます強い力で俺の手を引く。

「私、光圀くんが香道の先生になるところ、本当に楽しみにしているの。こんなことで、その足を引っ張りたくないの。光圀くんは私との約束を叶えようとしてくれただけなのに……」

 驚いたことに、和華はなみなみと目に涙をためていた。

 自分の痛みはそっちのけで、俺の未来のために泣いている。

 そんな彼女の気持ちを無下にはできなくて、俺はもう一度和華のそばに屈んで彼女の泣き顔を覗いた。

「そんな秘密を抱えて、心はつらくないのか? 火傷のことは親御さんだって心配するだろうし」
「平気。自分の不注意で火傷したことにするから」
「どうしてそこまでして……」

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