因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
思わず眉根を寄せると、庭のどこかから「光圀さん?」と俺を呼ぶ楓子さんの声がした。
和華はパッと立ち上がり、周囲を窺いながら小声で言う。
「私、もう行くね。またお店で!」
「ちょっと待て。まだ話は……」
引き留める俺の声は届かず、和華は茂みに身を隠しながら醍醐家を後にした。
消化不良の後悔や罪悪感が、胸にずしりとのしかかる。
「あら、こんなところにいらっしゃったのね」
楓子さんが、手水鉢のそばでしゃがみ込んだままの俺を見つけた。
反射的に顔を上げた俺と目が合うと、彼女は意味ありげに門の方向を見やる。
「額に傷のある子猫……光圀さんのお客様だったのかしら?」
……気づかれていたのか。
和華はああ言ったが、やはり悪いことを隠し通すことなどできはしないんだ。
「そうです。俺が不用意に火道具を扱ったせいで、彼女に怪我を。……父にも話します」
観念した俺はスッと立ち上がり、楓子さんの脇を通って母屋へ向かおうとしたのだが。
「話さない方がいいんじゃないかしら」
「……え?」
足を止め、彼女を振り返る。
楓子さんは着物の袖で口元を隠しつつ、三日月のように目を細めて言った。