因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「折り入って相談?」
冷静に聞き返したが、手元の文字は歪んでいた。
聞香に使用する香木の注文には昔から一式問屋に世話になっている。
しかし、店に連絡を取るのも品物を受け取りに出向くのも弟子か家政婦に頼んでいるため、俺自身が直接やり取りすることはなかった。
「……わかった。すぐに行く」
そうして電話を受けてみると、店の経営悪化のため、資金援助を依頼したいという話だった。
良質な香木を扱う一式問屋がなくなるのは醍醐流にとって痛手である。
最近はインターネットでなんでも手に入るというが、俺はコンピューターに疎くいまいち信用できない。
とりあえず詳しく話を聞くために、一式問屋に出向くことにした。
今でも和華は店に立っているのだろうか。彼女はどんな女性に成長しただろうか。
俺が負わせた傷跡は、今でも残っているのだろうか……。
ずっと穏やかに凪いでいた心が微かにさざめくのを感じながら、久々の一式問屋に足を踏み入れる。