因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「いらっしゃいま――」
懐かしい声のした方を振り向くと、和華は、あの頃と同じようにそこにいた。
七分袖のブラウスにジーンズ、エプロンといったシンプルな姿だが、肩の下まで伸びた髪やしなやかな体のラインに昔とは違う女性らしさを漂わせ、大きく見開いた目に、俺を映している。
眉下で揃えられた前髪のせいで、額の傷は確認できない。
それでも和華を見つめ続けていると、店の奥から彼女の父親が出てきた。
「ああ、醍醐さん、ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
恭しく頭を下げた一色さんは、売り場の奥にある従業員専用の部屋へと俺を促す。
我に返って彼について行く途中、今一度和華の方へ視線を投げると、彼女もまた俺を見ていた。俺との久々の対面に、困惑しきったような表情だった。
昔のように駆け寄ってもらえないのは当たり前だとしても、胸に一抹の寂しさを覚える。
自業自得とはいえ、俺たちの関係は大きく形を変えてしまった。
和華は今幸せなのだろうか?
もしもそうでないなら、今こそ贖罪を果たす時なのでは――。