因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「別に、傷があったって人の価値が下がるわけじゃないでしょうよ」
楓子さんへの反論を、今さらながら呟く。
それでも気が晴れないのは、寝坊の件が完全に自分の落ち度だからだ。
「……あぁもう、やめやめ!」
落ち込んでいる暇があったらさっさと身支度を整えてしまおう。
首を左右に振って、立ち上がる。着替えるなら、できるだけ好印象を与える服がいいだろう。
確か、カシミアの白いアンサンブルがあったはず。それにグレーのチェックパンツを合わせればわりと上品なスタイルになるかな。
コーディネートを決めたはいいが、目的の服がどの段ボールに入っているか探すところからだ。
「やっぱり昨日のうちに片付けておくんだった……」
泣きそうになりながら段ボールをひっくり返し、私は急ピッチで身支度を整えるのだった。
私と光圀さんが寝起きする部屋や、台所、食堂、お風呂があるのは、旅館のように広々とした母屋。
光圀さんが香道のお点前をしたり、お客様を招いて香席を設けたりする香間は一軒で独立しており、茶室のように趣のある草庵だ。
その他に古い書物などが保管してある蔵と、もう一軒長屋風の離れがあり、住み込みの家政婦や弟子たちがそこで暮らしている。楓子さんに指定されたのはそこだ。