因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
母屋から出て、色づいた楓や銀杏の葉が鮮やかな庭を、離れに向かって歩く。
建物が近づいてくると、玄関前で掃き掃除をする若い男性がいた。
一七〇センチほどの身長、爽やかな短髪、素朴で親しみやすい顔立ち……。披露宴で紹介を受けた気がするが、昨日のスーツ姿とは違って深緑の作務衣を着ているせいか、名前が思い出せない。
「おはようございます、あの……!」
「ああ、おはようございます、和華さん」
彼は黒目がちの目を細めてニコッと微笑み、掃除の手を止めた。
そこでようやく名前を思い出し、改めて挨拶する。
「昨日はありがとうございました、伊織さん」
「こちらこそ。和華さんの花嫁姿、とてもお美しかったですよ」
終始にこやかな彼は、長谷川伊織さん。私よりふたつ年上で、住み込みで光圀さんの指導を受けている一番弟子だ。
「いえいえ、見た目だけはそれっぽくしていただきましたが、中身が伴っていなくて。あの、楓子さんは今どちらに?」
「ああ、たぶんみんなの仕事にケチをつけに……」