因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

『光圀さん、なんだか煩悩まみれの人になっちゃったみたい』

 行為の後、私に腕枕する彼に思わずそう伝えたら、彼は心外そうに言った。

『そうならないために、満足するまできみを抱いているんじゃないか。中途半端に欲を残していたら、朝の座禅からうまくいかない。理性を保った醍醐万斎でいるためには仕方のないことだ』
『なんだか都合よく言い訳しているように聞こえ――』

 私の指摘は強引なキスで遮られ、太ももに当たる彼の熱が再び存在感を増していることに気づく。

『そういうわけだから、もう少し付き合ってもらおう』

 昼間の凛とした姿とは裏腹に、夜の彼はどこまでも強引で貪欲。私は処女を卒業したばかりなのに、全然手加減してくれないのだ。

 ……決して嫌ではないから、別にいいんだけど。

 恥ずかしい記憶を回想しているうちに、賽銭に並ぶ行列が進んで、私たちの番になる。

 賽銭箱にそっと硬貨を入れ、合掌。願い事をゆっくり唱えてから、焼香をした。

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