因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「本当に嫌いなんですね」
「ああ。味というよりぬめりのある食感がな。同じ理由で、オクラやモロヘイヤ、里芋や長芋も苦手だ」
「大人にしては結構好き嫌いが多いような……」
思わず苦笑したら、台所で太助くんがプッと笑った。
すかさず光圀さんが睨みを利かせるが、太助くんは小刻みに肩を震わせながらこちらを見る。
「さっそく奥様に幻滅されてしまいましたね。朝食の味噌汁にわざとなめこを入れた甲斐があります」
馬鹿にしたように言う彼は、およそ光圀さんに師事する立場とは思えなかった。
同じ弟子でも伊織さんはとても光圀さんを畏怖していたように感じたのに、この違いはどういうことだろう。
「太助、くだらないことをするな」
「大人げなく好き嫌いの多い先生の方がどうかと思いますけど」
「……そうだな。俺は修行が足りんようだ」
光圀さんはやけに突っかかってくる太助くんを大人の対応で受け流し、立ち上がる。
「そろそろ俺は出かけるから、和華は自由に過ごせばいい。わからないことは楓子さんに聞けば教えてくれる」
「はい。行ってらっしゃい」
どうやら光圀さんは楓子さんを信頼している様子。楓子さんも、彼の前では猫をかぶっているのだろう。
光圀さんが不在の間、何事もなければいいけど。