因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
秋物のコートを羽織って、醍醐家の門を出る。買い物はいつも近所の商店街でするそうだ。
爽やかな風を感じながら、下町の風景の中を太助くんと歩く。
「夕食も太助くんが作るの?」
「今日は一日当番ですからね。先生の嫌いな里芋でも煮ようかな」
冗談か本気かわからないが、太助くんはそう言ってクスクス笑う。
その態度がやっぱり不可解で、私は彼の横顔を見上げる。
「ねえ、どうして太助くんは光圀さんの弟子に――」
問いかけている途中で、前から走ってきた男性が、すれ違いざまに私の肩にドン、ぶつかった。
「す、すみません」
私は反射的に謝ったけれど、男性は振り返りもせず走り去っていく。
「ずいぶん忙しない人ですね。大丈夫ですか?」
呆れたように言って男性の後ろ姿を見送った後、太助くんが一応私を気遣ってくれる。
「うん。ちょっとぶつかっただけだから」
ぶつかった肩のあたりを軽くさすり、太助くんに微笑みかけたその時。
「おい待て! そいつ、食い逃げだ!」
「えっ?」