因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
いったい彼はなにを抱えているのだろう。
太助くんは立ち尽くす私にずいっと顔を近づけ、耳のそばで冷たく囁いた。
「そうやってふわふわ純粋なフリしてると、後で痛い目を見ますからね。……失礼します」
呆然とする私を残し、太助くんはさっさとと庭を進み、やがて姿が見えなくなる。
どうしてあんなにイライラしているんだろう。
私や光圀さんのせいだと、彼は言うけれど……。
「あら、和華さん。こんなところで太助さんと内緒話?」
考え込んで庭に佇んでいると、そばにある立派な松の木の影から、ふと楓子さんが姿を現した。声をかけられるまで、まったく気配に気づかなかった。
「楓子さん……。別に、内緒話というわけではありませんが」
しずしずと歩み寄ってくる彼女に、ぎこちない笑みを返す。
私は相変わらず、彼女が苦手。食堂や庭で出くわすと、つい避けてしまう。
「元々傷物の嫁だもの、素行不良でも私は別に驚かないわ。でも、世間的にあなたは醍醐流香道の家元の選んだ女性なのよ? そのことをよく自覚して行動なさって」
また、傷物の嫁。楓子さんはそのフレーズがお気に入りらしい。
しかし素行不良とは、どういう意味で言っているのだろう。
私と太助くんの仲を疑って? さすがにそれは濡れ衣だ。