因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「わかっています。太助くんとも、本当になにもありません」
「そう、それならいいけれど。あなたがあまり目に余る行動を取るようなら、私から光圀さんにお伝えさせていただきますからね。まったく光圀さんったら、ただの気まぐれで育ちの悪いお嬢さんを家に入れないでほしいわ。監督する方は大変だもの」
独り言というには大きめの声で嘆いた楓子さんは、最後に蔑むような視線を残し、私の前から去った。
息が詰まるような会話から解放され、ホッと胸を撫で下ろす。
それにしても、光圀さんが気まぐれで結婚相手を選ぶような人だと、楓子さんは本気で思っているのだろうか。
光圀さんは、そんな無責任な人ではない。むしろ、もっとちゃらんぽらんになってほしいくらいだ。
そうならないのが、光圀さんなんだけど……。
私は小さくため息をついて、とぼとぼ母屋へ向かった。
その夜、午後十一時を過ぎた頃。私はいつものように光圀さんと並んで布団に入っていた。
最初こそ照れくさかったけれど、光圀さんが無理やり迫ってきたことは一度もない。最近では彼が隣にいることに安心感を覚え、むしろぐっすり眠れるようになった。
しかし、今日は昼間初めての香席を体験した高揚感もあってか、目が冴えている。