因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
届かない距離がもどかしい。私に対してそう思ってくれたの?
問いかけるように、彼をジッと見つめる。耳の脇にあった彼の手がゆっくり移動し、今度は後頭部に添えられた。
反対の手は、布団にだらりと置いてあった私の手と重なり、指を絡めて握られる。逃がさないと宣言するように、しっかりと。
「まだ、説明がつくほどのハッキリした感情ではない。しかし、俺の中に抗えない衝動が生まれているのも事実。……今夜からは同じ布団の中できみを抱きしめて眠ってもいいか? 強引な真似はしないと約束する」
光圀さんの眼差しは、驚くほど切実だった。
香席での凛とした姿とは、まるで別人。醍醐流香道の家元としてでなく、ひとりの男の人として語りかけてくれているのが伝わり、胸が熱くなる。
「はい。断る理由がありません。私も、光圀さんともっとお近づきになりたいと思ってましたから」
「……そうか」
慈愛に満ちた目をして、光圀さんが微笑んだ。その直後、握り合った彼の手にギュッと力がこもり、彼の唇が私のそれと重なった。
驚いたけれど、彼とのキスも三度目。少しだけ耐性のついてきた私は、目を閉じて甘い感触を受け入れる。