因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「知り合い?」

 私の視線を追った貴英に聞かれ、ありのままを答える。

「住み込みで香道を学んでる、光圀さんのお弟子さん」
「へえ、クリスマスイブだからデートかしらね。修行中の身でも恋愛はご法度じゃないんだ」
「たぶん……」

 それにしてもあの女性、どこかで会ったことがあるような。

 目を凝らしていたら、ふわりと風に揺れた女性の髪に、赤いメッシュが入っていることに気づく。

 空木先生……?

 和服ではなくコートにスカートという服装だから気づかなかったが、背格好も彼女とよく似ていた。

 でも、空木先生と太助くんが腕を組んで歩くような仲だろうか。

 半信半疑で見守っていると、間もなくふたりは角を曲がって視界から消えた。

 彼らの向かった方向にあるのは、ラブホテル街。

 太助くんの私生活に口を出すつもりはないけれど、なんとなく心配になる。

「あらまぁ、昼間からお熱いこと。ダメじゃない和華、弟子に先を越されちゃって」

 貴英も彼らの行き先を私と同じように予想したらしく、そんな冗談を言う。私も「ホントだね」と笑って、それ以上ふたりの関係を勘ぐるのはやめた。

 太助くんだって大人だもの。誰とラブホテルに行こうと彼の勝手だよね。

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