囚われの令嬢と仮面の男
 ピクリとまぶたが痙攣し、彼の長いまつ毛が震えて持ち上がる。

「マリーン……?」

 青い瞳が私をとらえ、僅かに眉が寄せられた。髪と同じ毛色の形のいい眉だ。

 震える唇を止められず、私は手で口元を押さえた。

 彼の瞳が私の反応と、私の手元に落ちた白い仮面をとらえ、察したようだった。

 彼はハッと目を見張り、自らの手で顔を触った。動揺から目が左右に泳いでいる。

 彼は初めて見たあの舞踏会の夜と同じく、美しい顔立ちをしていた。

 スッと通った鼻筋と二重の双眸が、高貴な印象を抱かせる。

「あなただったのね。……エイブラム・ド・サミュエルさん」

 ***
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