彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
後部座席に座っている朱夏は待ち合わせのファミレスに着くまでずっと無言だった。
約束の時間よりも早く着くと落ち着くために食事をした。朱夏はホットケーキを少しだけ食べた、私はハンバーグステーキを食べてからアイスティーを注文した。
私と朱夏は奥から二番目のテーブルの席に座り諏訪さん達は出雲喜郎が来ても気づかれないように一番奥のテーブルについた。

出雲は約束の13時になっても来ない。
電話をしようかと考えていると、入店者を知らせる音が響き写真で見た軽薄そうな男が入ってくると朱夏が「せんせい・・」と呟いた。

「相馬くん、わたしの家を調べたってことかい?そう言うのは困るって言ったよね」

朱夏は下を向いたまま「すみません」と答えている。

二人とも何を言ってるの?状況を解ってないってこと?

「朱夏は関係ありません、fumiさんのSNSの#彼の家というのからご自宅をみつけました」

「え?」
朱夏は顔を上げて私の顔を見つめている。

「ふぅ、それで?わたしを呼び出してどうするつもりだ?」

あくまでもシラをきるつもりなんだろうか?

「研究室に朱夏を呼び出しては関係を持ってましたよね、朱夏はあなたの子を孕ってます。しかも、堕してこいと言いながら責任すら持たず、堕胎費用も出さないつもりなんですか?」

出雲喜郎は店員の呼び出しチャイムを鳴らしてスタッフを呼ぶとコーヒーを注文した。

「お姉さんでしたっけ、相馬くんのお腹の子がわたしの子だという証拠はあるんですか?そもそも、単位欲しさに身体を差し出すような子ですよ?他の先生の子かもしれないですよね?」

「酷い!初めても先生だし、先生以外は知らない。それに、可愛いって好きだって言ってくれたじゃないですか」

朱夏は着ているパーカーの裾をキツく握りしめている。

「まぁ、単位の為に必死になってる子は可愛いからね」

「出雲さんは避妊すらしていなかったと聞いてます」

「さっきから言ってるけど、単位ほしくて簡単に股を開くような子だからピルくらいは普通に飲んでると思うでしょ。お姉さんも、妹が可愛いのはわかるけど、打算で男と寝る子だって知られるのはマズいんじゃないの?まぁ、そこまで言うなら堕胎費用くらい出しますよ、それでいいんでしょ」

うじ虫以下だ。
何を言ってもこの人には通じないかもしれないと思っていた時、出雲の前にコーヒーが置かれたことに出雲は持ってきてくれた人に「ありがとう」と声をかけたまま凍りついていた。


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