彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
「典代?」

「コーヒー冷めちゃったけど注文しておいたものをあげます」

毅然とした態度の奥様の後ろから年配の男性が現れると、出雲は目を大きく見開き中腰で立ち上がった。

「義父さん」

義父さんと呼ばれた男性は出雲の隣に座り、奥様は私の隣に座った。

6人掛けのテーブルがキッチリと埋まっていく。
ただ、諏訪さんはそのまま後ろのテーブルで私を見守ってくれている。

出雲は隣に座る男性に「何か勘違いをしているようで、わたしは何も」と言い訳をしているが、男性は全く出雲の顔を見ることもなかった。

「奥様、昨日はお話を聞いていただいてありがとうございました。朱夏、出雲先生の奥さんです」

朱夏は何も言わず頭だけを下げたが奥さんのお腹に気がつき息を呑んだ。

「典代、違うんだこれは」

出雲は先ほどまでの不遜な態度は身を潜め目を泳がせ落ち着きがなくなっている。

奥様はポリプロピレン製のドキュメントファイルからA4サイズの書類を取り出すとテーブルの上に並べていった。
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