彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
「あなたが浮気をしているのは知ってました。クラブEmperorの希さん」

隣の朱夏の体がピクリと痙攣し、斜向かいの出雲は右手で口元を隠しているが、返す言葉を探しているように見える。

「それは、付き合いで行っているキャバクラの子だよ、お酒の席もあるし向こうも仕事だから同伴くらいはするからそれで誤解をさせてしまったならすまなかった。気をつけるよ、わたしは・・」

「その程度のことなら許容範囲です」
奥様は出雲がまだ何かを言おうとした言葉を遮った。

「希さんは源氏名で、本名は田沼英子さん。同伴というのは彼女の部屋に行ったり、ホテルに行ったりすることも含まれるんですかね？ただ、このかたは“商売”としてあなたと付き合っているのなら、太郎と今お腹にいる子の為に目を瞑るつもりでした」

そう言いながら奥様は田沼英子と出雲が腕を組んだり、抱き合ったりしながらマンションの部屋に入っていく姿やホテルに出入りしている写真を複数枚テーブルに並べていく。

田沼英子？顔は知らなかったが名前は聞いたことがある。
父さんの不倫相手と同じ名前だ。

「これは」

慌てる出雲に対して、その隣に座っている奥様のお父様に動揺は見られないところをみると、この件は知っていたんだろう。
そして、お父様が低く落ちついた声で写真について話をはじめた。

「私が調査費用を出して探偵を頼んだんだよ。外で会っているのはこの女性だけだったから不倫相手はすっかりこの女性だけだと思っていたよ」

「私も、この女性との関係については出産後にでも話をするつもりでした」
「でも」
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