彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
「子育てについて情報交換したいと思って始めたSNSにfumiさんという方からフォローをいただきましたが、その方とは特に話題が合いそうもなかったから私からのフォロー返しはしませんでしたが、そのかたは必ず私の投稿には“いいね”をつけてくれるため、時々はその方の投稿を見ていたんですが、ある時自宅の写真を“#彼の家”として投稿しているのを見つけましたが気のせいだろうと思いました」
誰も言葉を発せず、奥様の次の言葉を待った。
奥様はドキュメントファイルから数枚の紙を取り出してテーブルに並べていく。
その紙には紙いっぱいに文字が書かれていた。
[はやく離婚しろ]
[喜郎さんが愛してるのはわたしだよ]
さらに、奥様はSNSから印刷したと思われる写真も並べていく。
「こんな手紙がポストに入るようになりました」
出雲が唾を飲み込む音が聞こえる。
「私には守るべき子供がいます。太郎と今、お腹の中にいる子。fumiさんには家を知られているし、通常の思考能力を持ち合わせているように思えません。両親と相談して危険を冒してまで子供達に父親が必要かと考えた時に、不要だと結論を出した時に、相馬さんが訪ねて来られました」
「おねえちゃん」と隣に座っている朱夏はつぶやいた。
「夫は私が二人目を妊娠した時に、ありがとうと言いました」
膝の上で硬く結んだ朱夏の手の甲にポタポタと涙が落ちている。
「でも、感謝の言葉を吐いたその口では学生に手を出した挙句、口汚く罵りの言葉がでてきたことにこんな父親なら、いない方がマシだと改めて決意しました。父が学部長でその義理の息子がこのような不始末をしたことにこんな男と結婚してしまって父にも申し訳ないと思ってます」
「ただ、相馬朱夏さん、あなたは妻子がいることを承知で夫との不倫関係を続けていましたから、当然慰謝料の請求をさせて頂きます。」
朱夏は口元を両掌で塞いではいるが嗚咽が漏れていた。
「150万円を請求するつもりでしたが、子供を産むのでしたら出産祝いとして、堕胎手術をおこなうのでしたらその費用として50万円は差し上げますので100万円を必ず朱夏さんあなたが働いたお金でお支払いください。月に1万でも2万でも構いません、朱夏さん本人が振込をするか私の元に持参してください。何年経っても構いません、あなたが犯した過ちを家族に尻拭いさせぬようお願いします」
ううううううっ
朱夏はテーブルにうつぶして泣き続け、出雲は顔を背けている。
そう、これがこの男の本性だ。
人の本性なんて簡単に見分けられない。だけど、妻子のいる人の甘い言葉を信じた段階で朱夏はこの男と同じ部類の人間に落ちたんだ。
「そしてあなたは、もう家に帰って来なくて結構です。研究室をホテル代わりにしていたようですし、着替えなどはそちらに送っておきます。あとは弁護士を通してのみ話をいたします」
「典代、すまない。もう二度と浮気はしないだから」
テーブルに手をついて頭を下げる出雲、うつぶして泣く朱夏。
店の奥ではあったが、いいかげん目立ちそうだ。
「朱夏さんにも内容証明を送りますので、先ほどのこと守ってください。最後に、お姉さんはとても気がきくよい方ですね、昨日のクッキーはグルテンフリーでした。太郎にアレルギーはないですが、あったとしても大丈夫なようにと細かな気遣いを感じました。あなたもほんの少しでもお姉さんを見習ってください。では、私は失礼します」
奥様が立ち上がると、そのお父様も一緒にたちあがった。
「喜郎くん、この件は大学には報告するから、早急に部屋を探した方がいい。娘が研究室に荷物を送ると言っているが、数日中に君は居場所を無くすだろうから」
そう言い残して二人が立ち上がり店を出ていくのと同時に、後ろのテーブルにいた諏訪さんが伝票を持って立ち上がった。
「相馬、帰ろう」
泣き崩れる朱夏の手を引き、魂が抜けたように呆然としている出雲を残して店を出た。
誰も言葉を発せず、奥様の次の言葉を待った。
奥様はドキュメントファイルから数枚の紙を取り出してテーブルに並べていく。
その紙には紙いっぱいに文字が書かれていた。
[はやく離婚しろ]
[喜郎さんが愛してるのはわたしだよ]
さらに、奥様はSNSから印刷したと思われる写真も並べていく。
「こんな手紙がポストに入るようになりました」
出雲が唾を飲み込む音が聞こえる。
「私には守るべき子供がいます。太郎と今、お腹の中にいる子。fumiさんには家を知られているし、通常の思考能力を持ち合わせているように思えません。両親と相談して危険を冒してまで子供達に父親が必要かと考えた時に、不要だと結論を出した時に、相馬さんが訪ねて来られました」
「おねえちゃん」と隣に座っている朱夏はつぶやいた。
「夫は私が二人目を妊娠した時に、ありがとうと言いました」
膝の上で硬く結んだ朱夏の手の甲にポタポタと涙が落ちている。
「でも、感謝の言葉を吐いたその口では学生に手を出した挙句、口汚く罵りの言葉がでてきたことにこんな父親なら、いない方がマシだと改めて決意しました。父が学部長でその義理の息子がこのような不始末をしたことにこんな男と結婚してしまって父にも申し訳ないと思ってます」
「ただ、相馬朱夏さん、あなたは妻子がいることを承知で夫との不倫関係を続けていましたから、当然慰謝料の請求をさせて頂きます。」
朱夏は口元を両掌で塞いではいるが嗚咽が漏れていた。
「150万円を請求するつもりでしたが、子供を産むのでしたら出産祝いとして、堕胎手術をおこなうのでしたらその費用として50万円は差し上げますので100万円を必ず朱夏さんあなたが働いたお金でお支払いください。月に1万でも2万でも構いません、朱夏さん本人が振込をするか私の元に持参してください。何年経っても構いません、あなたが犯した過ちを家族に尻拭いさせぬようお願いします」
ううううううっ
朱夏はテーブルにうつぶして泣き続け、出雲は顔を背けている。
そう、これがこの男の本性だ。
人の本性なんて簡単に見分けられない。だけど、妻子のいる人の甘い言葉を信じた段階で朱夏はこの男と同じ部類の人間に落ちたんだ。
「そしてあなたは、もう家に帰って来なくて結構です。研究室をホテル代わりにしていたようですし、着替えなどはそちらに送っておきます。あとは弁護士を通してのみ話をいたします」
「典代、すまない。もう二度と浮気はしないだから」
テーブルに手をついて頭を下げる出雲、うつぶして泣く朱夏。
店の奥ではあったが、いいかげん目立ちそうだ。
「朱夏さんにも内容証明を送りますので、先ほどのこと守ってください。最後に、お姉さんはとても気がきくよい方ですね、昨日のクッキーはグルテンフリーでした。太郎にアレルギーはないですが、あったとしても大丈夫なようにと細かな気遣いを感じました。あなたもほんの少しでもお姉さんを見習ってください。では、私は失礼します」
奥様が立ち上がると、そのお父様も一緒にたちあがった。
「喜郎くん、この件は大学には報告するから、早急に部屋を探した方がいい。娘が研究室に荷物を送ると言っているが、数日中に君は居場所を無くすだろうから」
そう言い残して二人が立ち上がり店を出ていくのと同時に、後ろのテーブルにいた諏訪さんが伝票を持って立ち上がった。
「相馬、帰ろう」
泣き崩れる朱夏の手を引き、魂が抜けたように呆然としている出雲を残して店を出た。