彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
帰りの車の中では朱夏はずっと泣いていた。
それは出雲に酷い言葉を浴びせられたからなのか、騙されていたことに気がついたからなのか。
でもそう言う事ではなく、自分のしたことの罪の重さに気付き謝罪の涙であってほしい。

朱夏を自宅に送ってから、私は諏訪さんと住む家に帰った。
なんとなく、縁側に二人で並んで座って何も植っていない庭を眺めていた。

「奥さんはあの結論に至るまで随分と悩んだんだろうね」

その言葉で、昨日のことを思い出した。

「奥様が妊娠中だと気がついて、誤魔化して帰ろうと思ったんだけど、先に当てられちゃって。すごく毅然としていてかっこいいって思ったけど、誰よりも傷ついたのは奥様だよね」

「相馬は？これでもう前を向けそうか？」

あっ
「あと一つ残ってました。ここで電話してもいいですか？」

「ああ」

アドレス帳から悠也の名前をタップする。
悠也はワンコールですぐに電話に出た。

『彩春、ごめんオレ。やっぱり彩春が好きだよだから、やり直そう』

「妹が悠也にしたことは許されないことだと思う。だけど悠也はあの時、私ではなくたった一夜しか過ごしていない朱夏を選んだ」

『だからそれは、責任を取ろうと思って』

「私は、その時は傷つくかもしれないし、結果的に別れることになるかもしれないけど、結論を出す前に私に言って欲しかった。私を優先して欲しかった」

『オレは、間違えてしまったんだな』

「ありがとう、そしてさようなら」

私は通話を終了して悠也の名前をアドレス帳から削除した。

< 49 / 137 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop