赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「でも、さすがに二十歳のお誕生日ですし……」
「どうせ、〝せっかく二十歳の区切りだから〟と、あと二、三回は似た会を開く。あの親子は自分たちが主役の時間が堪らなく好きだからな」
そんなハッキリ言わなくても……とは思うものの、そう言われてしまうと出席者の笑顔もみんな楽しんでいるというより〝しょうがないな〟と聞こえてきそうな笑みに見えてくる。
私は初めてのパーティーなのでワクワクしながら足を運んだけれど、たしかに年に何度もとなると足取りは重たくなるものかもしれない。
会場にいる女性は皆、それぞれ素敵なドレスに身を包んでいる。
その中にいるひとりの女性の後姿が沢井さんと重なり……ふと彼女の笑顔が浮かんだ。
叔父さんとの件が無事片付いたため沢井さんとの契約も終了したと匡さんから聞いたのは、もろもろの誤解が解けた一週間後だった。
間接的にでも長い間見守ってもらっていたのでお礼を言いたいと申し出たけれど、匡さんに『ただの仕事だし、礼なら俺から伝えておいた』と言われ、渋々納得した。
後から聞いた話だと、匡さんは沢井さんに叔父さんからつけられた肩の傷について説明したことはあるものの、目の前で肩の傷を晒したことはないらしい。
ついでに言えば、どう考えてもあのフェルトでできたユニフォームを落とすはずがないとも不可解そうにしていたので……一連の話は、きっと沢井さんの優しい嘘だったのだろう。
私が記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないと考え、匡さんの目を盗んでフェルトも盗み、私の目に触れさせた。
肩の傷の話をしたのも、私にその怪我を印象付けるためだったのだと思う。
そこにはただの仕事を超えた思いやりがあったと思うので、悔しいけれど沢井さんは初めて見たときに感じた通り、とても素敵な女性だ。