赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


ついうっかり出てしまった言葉は今更回収することもできずに、笑って誤魔化すという常套手段に出たとき、横から「久しぶりねぇ」という女性の声が割り込んできた。

立っていたのは紫色の着物に身を包んだ祥子さんで、慌てて立ち上がろうとした私を匡さんが止めた。

「お久しぶりです。美織は今、本調子ではないため座ったままで失礼させていただきます」

もうどこも悪くないけれど、そう言っておいた方がいい相手もいる。
匡さんも今まで祥子さんには相当うるさく言われているみたいだし、私も談笑したい相手ではない。

私の調子が悪いと言っておけば早く立ち去ってくれるかもしれないと思い、「すみません」と座ったまま会釈すると、祥子さんはギュッと眉間にシワを寄せた。

「あなた、入院していたんでしょう? 情けない。今からそんな様子で立派な男の子がちゃんと産めるのかしら。一応は桧山グループの跡取りとなる子なんだから、しっかりしてもらわないと困るのよね」
「もちろんです。桧山グループの跡取りの前に、匡さんとの大事な子ですから性別関係なく大事に守ります。体調の面では匡さんも支えてくれていますので、祥子さんにご心配していただくまでもありません」

匡さんから、祥子さんに対してはあちらが噛みついてくるようなら好きに対応していいとあらかじめ言われていた。その方が、後々楽だからと。

そういえば麻里奈ちゃんも一度噛みつき返したら黙ったので、そういうことなのかなと理解したのだけれど……やっぱり、そういう意味だったらしい。



< 240 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop