リスタート〜さよなら、私の初恋〜
「ひーなー。ご飯食べよ!」

それから午前は何事もなく終わり、お昼休みになった。紗奈がお弁当を持って私に声をかけてくれたから、私もお弁当手に席を立った。

「成宮さーん」

席を立ってすぐの私は、教室の前の廊下に立つある人に呼び止められた。あれ、あの人って…。

「え、と、柏木さん?」

柏木優里花さん。瞬の彼女……。

「うん。成宮さんに少し話があるんだけど、いいかな?」

にこやかにそう言う彼女は、どこか恐ろしさを感じた。なんとなく、嫌な予感がした。そんな私の様子に、紗奈はすぐ気がついてくれた。

「ひなは今から紗奈とお昼ご飯食べるんだ。ごめんね」

紗奈は私たちの間に入り、丁寧に断ってくれた。紗奈は本当に優しい。助かった。心からそう思っていたのに……。

「すぐ終わるから大丈夫。少しだけだから、お願い!」

柏木さんがそう言いながら、両手を合わせ上目遣いで頼んできた。こんな可愛い子にこんな可愛く頼まれたら断れないよ……。紗奈も怯んでる。廊下を通る人の視線が、たくさんこっちに向いているのが分かる。

「……わかった。少しだけなら」

早くこの状況から抜け出したくて、私は気づいたらそう口にしていた。

「ひ、ひな!?」

横で紗奈がものすごく驚いている。私だって本当は行きたくない。けど……。

「大丈夫。紗奈は先にいつものところでご飯食べててくれる?」

私は、少しだけほほ笑みを浮かべながら紗奈に言った。紗奈は、少し戸惑ってから小さく頷いて、この場を後にしてくれた。
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