ママの手料理 Ⅲ
(お昼でいいよ、明るいし…)


特に他の時間帯にする理由もなかった私は、うん、と頷きかけたのだけれど。


「いや、そこは夕方からだろ」


斜め前のベッドから、異論を唱える声が聞こえてきた。


(え?)


「理由は?」


「夕方から盗みを始めれば、成功時間は大体夜の8,9時前後になるだろ。そしたら最上階から夜景が見えるじゃねーか」


湊さんの質問に淡々と答えていく琥珀が並べあげた理由は、何とも信じられないものだった。


(…え、生きるか死ぬかの瀬戸際の闘いなのに、そんな余裕があるなんて、!)


呆れと驚きで最早何も言い返せず、ただ口をあんぐりと開けた私をよそに、


「え!待って琥珀天才!?45階から見る夜景なんて綺麗すぎて倒れるに決まってる!ティアラ奪還、45階の高層ビル、夜景…一石三鳥じゃんもう大好き」


どこまで行っても琥珀の味方である大也が、感動のあまり天を仰いだ。


大也の言葉には応えなかったものの、琥珀はどうだと言いたげな目をリーダーに送り。


「……いや、決行は昼の2時からにする。闘いは長くなるだろうから、夜景も見えると思うよ」


数秒考えあぐねていた彼は、彼らの意見を尊重しながら決行時間を決定した。



「ああそうだ、言い忘れてた」


それから1時間程が経過し、そろそろ会議もお開きになりかけていた時。


(何…)
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