ママの手料理 Ⅲ
「ほらまた言った。口癖なの？直すべきだよ本当に。君は本当に死にたいと思ってる人の気持ちをわかってないんだよ」


ハッと鼻で笑う仁さんは、そんな彼を全く恐れていないようだった。


「養護園に居て楽しかった？家族が居なくて、独りぼっちで。逆に嫌だったんじゃない？親戚は引き取りに来ないし、里親は現れない。そんなに弱虫のくせに現役警察官なんてどんな皮肉？…全く、よく今まで生きてこれたよね本当に」


「仁、いい加減にしなさい。怒るよ」


部屋の入り口から、湊さんの感情を押し殺した低い声が聞こえる。


部屋の空気がピリピリとしている。


怖くなった私は、そっと大也にしがみついた。


「大丈夫大丈夫」


彼は私を安心させようと頭を撫でてくれるけれど、全く安心できない。


「…うるせぇな、お前の方が一匹狼堪能してるくせに何言ってんだよ」


琥珀の声は静かで、けれど怒りを抑えたような声だった。


「へその緒もついたまま、生後数時間で捨てられたくせにいい気ぶりやがって。お前、自分の親の顔も名前も知らねぇじゃねえか」


(へその緒がついたまま…！？)


琥珀の口から漏れた衝撃の事実に、私はあんぐりと口を開けたまま固まった。
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