ママの手料理 Ⅲ
「…二人の会話はあんまり理解できなかったですけど、なんか…仁さんも仁さんなりに頑張ってきたんだなと思いました。あと、壱さんも」
私の言葉を聞いた仁さんが、嗚咽を漏らして両手で顔を覆った。
彼の腕に付けられたオレンジ色のリストバンドが、一際明るく光り輝く。
その姿からは、いつものナルシストで自己評価の高い最年長mirageの面影は微塵も感じられなくて。
(仁さん……)
仁さんの衰弱した姿なんて見た事がなくて、どうしたらいいか分からない。
ただただ、その背中をさすってあげる事しか出来なかった。
「……紫苑、ちゃん」
「…はい」
彼の背中をさすり続けて、何分も時間が経った。
私も仁さんもお風呂に入り損ねたけれど、今はそんな事を考える余裕もなく。
比較的泣き止んで呼吸も落ち着いてきた仁さんに不意に名前を呼ばれ、私は背中をさする手を止めた。
「ごめんね、嫌な所見せちゃって…、」
そう言い出す傍から、彼はふーっ、ふーっ、と辛そうに息を吐き始める。
「嫌なんかじゃ…、全然嫌じゃないです!此処に来たばかりの頃、私の方がもっと泣いてましたし…だから謝らないでください」
私の言葉を聞いた仁さんが、嗚咽を漏らして両手で顔を覆った。
彼の腕に付けられたオレンジ色のリストバンドが、一際明るく光り輝く。
その姿からは、いつものナルシストで自己評価の高い最年長mirageの面影は微塵も感じられなくて。
(仁さん……)
仁さんの衰弱した姿なんて見た事がなくて、どうしたらいいか分からない。
ただただ、その背中をさすってあげる事しか出来なかった。
「……紫苑、ちゃん」
「…はい」
彼の背中をさすり続けて、何分も時間が経った。
私も仁さんもお風呂に入り損ねたけれど、今はそんな事を考える余裕もなく。
比較的泣き止んで呼吸も落ち着いてきた仁さんに不意に名前を呼ばれ、私は背中をさする手を止めた。
「ごめんね、嫌な所見せちゃって…、」
そう言い出す傍から、彼はふーっ、ふーっ、と辛そうに息を吐き始める。
「嫌なんかじゃ…、全然嫌じゃないです!此処に来たばかりの頃、私の方がもっと泣いてましたし…だから謝らないでください」