ママの手料理 Ⅲ
不良トリオは意外と口が堅く、ひょんな事から真実を知られてしまった時も“秘密”として対応してくれた。


怪盗の界隈でも名の知れた情報屋である伊織は、仁が何かを言う前から既に情報を入手していたようで。


湊には、初めて出会ったその日に質問攻めにあい、その熱量に負けて思わず教えてしまった。


そして、紫苑には昨夜やっとの思いで本当の事を伝えたところである。



「お前、昨日琥珀と喧嘩したんだって?湊から聞いたぞ」


ミント味とイチゴ味のチョコレートを手に取り、どちらがいいかと吟味している銀河がふと口を開いた。


仁は、ふっと笑ってそれに答える。


「…あんなの喧嘩じゃないよ?あっちが一方的に変な事言うのが悪いんだよ」


「けど、最初にふっかけたのお前だろ」


正論を突かれ、仁はうっと言葉に詰まった。


「死ぬだの死なないだのどーのこーのって…誰だって死ぬのが怖いに決まってんだろ」


銀河の言う事は、明らかにその通りである。


人間は誰しも、この世で産声をあげたその瞬間から死への道をひたすらに歩んでいく。


誰もがいつかは経験する死を怖がるのは、自然な事。



「そうだけどさ、あの態度にムカついちゃったんだよね…。しかもあいつも、大也の目の前で余計な事を言う必要はなかったはずなのにさ」
< 98 / 355 >

この作品をシェア

pagetop