ママの手料理 Ⅲ
一言余計なんだよなぁ、とぼやくと、お前もだろ、と隣から辛辣な言葉が飛んできた。


「お前、いつまで大也に隠しておく気だ?早く手を打たねぇと最悪な結果になりかねないぞ」


その言葉を聞いた仁は、まるで他人事のように鼻歌を歌いながら棚に陳列された商品を吟味していく。


「…その時は、その時かな」


その適当な返答に、隣でまだ2種類のチョコレートを持っている銀河が大きくため息をついた。


「…お前、もっと真剣に考えろよ…。たった1人の兄弟だろ?」


その言葉に違和感を感じた仁は、片眉を上げて隣を見やる。


「そういう銀河だって兄妹が居るでしょう?自分の事を棚に上げてこの僕に楯突くなんて、全然説得力ないからね」


「っ……」


今度は、銀河が言葉に詰まる番だった。


「…お前、昔から本当に嫌な奴だよな…」


「それを知ってて未だに一緒に居るってことは、僕達腐れ縁だね?因みに兄妹何人居るんだっけ」


どこまで行っても自己愛が止まらない仁の台詞に銀河は舌打ちをしながら、3人、と吐き捨てた。


「そう…探そうとは思わないの?」


ようやく決心がついたのか、仲間から天才ハッカーと崇められるその男はミント味のチョコレートをカゴに入れ、その音でかき消される程の小さな声で答えた。


「…思わねぇよ」


そんな彼をちらりと見た仁は、口角を上げる。
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