没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
弟への深い愛情に、オデットは胸が締めつけられた。

「これが、レオポルド殿下の願い。国王陛下に早くお見せしたいです。形見の指輪を首にさげて今も苦しんでいらっしゃる陛下に……」

涙をポロポロとこぼしてそう言うと、ガレがいたたまれないように両手で顔を覆った。

「そうですか。ガブリエル様がレオポルド様の指輪を。後悔すればいいと恨んでいた私が愚かでした。大変申し訳ございません……」

苦労を重ねたようなごつごつした指の間に涙が伝う。

ジェラールはガレに歩み寄り、その肩に手を置いた。

「伯父上は父上と敵対したくはなかった。争いも、誰の不幸も望んでいない。ならばその遺志を私が継ごう」

ガレが震える両手を顔から離し、驚きの目にジェラールを映した。

「そこで一緒に泣いてくれている心優しきオデットは、レオポルド派と言われるログストン伯爵家の令嬢だ。私はオデットを妃にする。それを機にレオポルド派の貴族たちを政界に戻そうと考えている」

ジェラールを見つめるガレの瞳に、たちまち尊敬の色が広がっていく。

「私も争いは嫌です。みんなが仲良く暮らしていけるといいですね」

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