没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
拝金主義的なところのあるバロ司教の顔を思い出して、オデットは深く頷いた。

「三百年前の聖女様と同じように、今回の聖女様も異世界からいらっしゃったのかしら。お会いしてみたいです」

オデットが微笑んでそう言うと、カチャッと大きな音がした。

ジェラールがカップをソーサーに戻そうとしてぶつけたようだ。

中の紅茶がこぼれていないのでなにも問題はないが、食事の所作が貴族的に優雅で美しい彼が一体どうしたのかとオデットは疑問に思った。

(今日は口数も少ないし、やっぱり相当お疲れなのね……)

心配して声をかけようとしたが、その前にルネに指摘される。

「オデット、いつまでも立っていないで椅子を持ってきたら?」

「あ、そうね」

リリアに席を譲ったため椅子が足りず、オデットはカウンター裏からスツールを持ってこようとした。

しかしジェラールに呼び止められる。

「ここに座って。俺はもう帰らないといけない」

「えっ」

着いてから十五分ほどしかたっていないし、ジェラールのカップには半分以上紅茶が残っている。

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