没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
オデットにはそれも嬉しく、隣ではブルノも目尻の皺を深めて微笑んでいる。

「ご婚約おめでとうございます。それでお相手は……いや、失礼。詮索すべきではありませんでした。年寄りの独り言だと聞き流してください」

頭をかいたブルノをオデットがフフと笑う。

カウンター前に和やかな空気が流れる中で、サラが口元の笑みを強めた。

「ありがとうございます。王太子殿下は紳士的で素敵な方。この世界に呼ばれた意味は、ジェラール様と結ばれることにあったのだと感じているんです」

「え……?」

オデットは笑みを浮かべたまま固まった。

頭をハンマーで殴られたような強いショックを受け、思考が停止する。

代わってブルノが焦り口調で聞き直してくれる。

「失礼ながら、なにかの間違いではありませんか? 王太子殿下はここにいるオデットを妃にすると仰っているんですよ」

するとサラがスッと笑みを消し、挑戦的な視線をオデットにぶつけた。

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