没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「ジェイさん、どうしてここに!?」

「どうしてって、もちろんオデットに会いにきたんだよ」

お忍びの格好のジェラールは、オデットがなぜ驚いているのか不思議に思ったようで、抱擁を解いて顔を覗き込む。

目尻の少し垂れた翡翠色の瞳ははっきりと露に濡れており、ジェラールに眉間にたちまち皺が寄った。

「なにがあった?」

「あの、聖女サラ様が……。これからお城で殿下とお茶を飲むと言って帰られたんですけど、違うんですか?」

「カルダタンに来たのか」

しまったと言いたげな顔のジェラールに、オデットはポロポロと涙をこぼしながら不安を打ち明ける。

「サラ様のお話はどこまで本当なんですか?」

その質問でオデットがなにを言われたのか、ジェラールは理解したようだ。

強く抱きしめ、申し訳なさそうに言う。

「不安にさせてすまなかった。聖女を俺の妃に、という話を聞かされたんだね?」

「はい。私との結婚話は白紙だと仰っていました」

「それは父上が勝手に言いだしたことだ。俺が愛しているのはオデットだけ。必ず君を妃にすると誓う。信じてくれ」

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