没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
忙しそうに立ち動いているのはバロ司教の下で働く聖職者で、司教は聖堂内にいないようだ。

バロ司教に用があるとジェラールが言うので、ふたりは関係者用の素朴なドアをノックした。

すると以前、カルダタンにバロ司教の使いで来た青年が顔を覗かせた。

「カルダタンのオデットさん、こんにちは。バロ司教とお約束ですか?」

「こんにちは。約束はしていないんですけど、お話したいことがあるんです。取り次いでいただけませんか?」

少し待たされてから司教の執務室に案内された。

「どうぞ」

青年聖職者はオデットたちを中に通すと、ドアを閉めて出ていった。

執務室の両サイドの壁には天井まで届く高さの書棚があって、古びた背表紙の本がぎっしりと並んでいた。

部屋の中央にはふたり掛けのソファがふたつ、四角いテーブルを挟んで置かれている。

バロ司教は窓辺の机に向かっていたが、書類をトントンとそろえてから立ち上がると、こちらに来てくれた。

「おや、殿下もご一緒でしたか。応接室にお通しせず失礼いたしました。ですが今日もお忍びのご様子で。それでしたら余計なおもてなしをしない方がよろしいでしょうな」

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