没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「私に知られたくない交友関係があるのですか? 聖女を召喚したのはあなたですね。誰かに大金を積まれて頼まれたのでしょう。聖女信仰は盛り上がり、お布施が増えたでしょうから旨味だらけだ」

オデットは口元に手をあてて目を丸くする。

疫病が蔓延しているわけでもないのに、どうして聖女が現れたのかとロイが疑問を呈したのを思い出していた。

(まさかバロ司教が、お金のためにそんなことを……しそうな気がするわ)

厳しい面持ちのジェラールと悲しそうなオデットの視線を浴びて、バロ司教が顔の前で片手を振る。

「滅相もございません! 召喚術は秘術とも禁術とも言われております。それこそ幻のようなもの。聖女サラ様を誰が召喚したのかわかりませんが、わしのような一介の司教にはそのように大層な真似はできません」

教会には聖女について記した古い本が五冊伝わっている。

国立図書館にも何冊か聖女について書かれた文献があって誰でも閲覧できるけれど、この教会の書物は基本的に貸し出していない。

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