没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「ええ。この教会には聖女の水晶玉や書物が伝わっておりますゆえ、ご降臨されて間もなくサラ様の方からお越しくださいました。古事の通り黒髪の美しい乙女でした」

崇拝対象である聖女に出会えてよほど感激したのだろう。

バロ司教はサラを思い出してうっとりと頬を緩ませる。

「三百年前の聖女サヨ様と同じ世界からやってきたと仰っておいででしたな。つまりサラ様も日本人ということじゃ」

「日本? それが異世界の国名ですか」

国名は童話の中で省かれているので、知っている者は少ないと思われる。

ジェラールも初めて聞いたようだが、オデットは少々驚きつつ素朴に返す。

「サラ様も日本人なんですか。私の前世と同じですね」

オデットを牽制しにやってきたサラに、急に親近感が湧く。

けれども引っかかる点がひとつだけあった。

(私と違ってサラ様は日本で暮らしていたところを、この世界に呼ばれて肉体ごと来たのよね。でも日本人らしい特徴は髪色くらいだったわ。ハーフなのかしら?)

スラリと長身で色が白く、碧眼のサラを思い出していたら、ジェラールに手を握られた。

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