没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
夫妻はジェラールに会釈してから笑顔で答える。
「王太子殿下からお声をかけていただけるとは恐縮でございます。園遊会以来、そうでございますな。殿下のご活躍は遠方の我が領内にまで届きますので、ご無沙汰していたとは気づきませんでした」
「お会いできるのを指折り数えて楽しみにしておりましたわ。殿下はお変わりなく美しくいらっしゃって、年頃のお嬢さんたちは心を奪われることでしょう」
ジェラールを褒めたたえた夫妻の視線が、半歩下がった位置に緊張して立つオデットに向けられた。
「そちらのお嬢様は……」
この部屋に入ってから挨拶は十人目となるが、このような場に不慣れどころか初めてのオデットは汗ばむ手を握りしめる。
「こちらはログストン伯爵家のご息女です。ぜひお見知りおきを」
「はじめまして。オデットと申します。どうぞよろしくお願いします」
スカートをつまんで腰を落とし、淑女に見えるよう気をつけて挨拶したオデットに、バラデュール伯爵夫妻は眉を寄せた。
「ログストン伯爵と言えば、たしか……」