没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
スタイルのいいサラの体にフィットしたデザインの夜会服とパンプスは今日も白一色で、豊かに波打つ黒髪が際立っている。
髪飾りはオデットと色違いの白いバラの生花だ。

「なんとお美しい。神話に登場するビーナスのようですな」

「まぁ、頭痛がスッと引きましたわ。お姿を拝見しただけですのに。素晴らしいお力ね」

彼女を褒めたたえる声が周囲から聞こえ、得意げな顔のサラとインペラ宰相がステージに上がると拍手が沸いた。

「王太子殿下、お招きくださいましてありがとうございます。先日のお茶の席ではご都合が合わず残念でしたわ。その代わりに国王陛下がジェラール様のお話を聞かせてくださいましたの。初めてお会いする気がしないのはそのせいですわね。想像通りの素敵な――」

「サラさん、ようこそ。私への挨拶はほどほどにしましょう。皆さんをお待たせしていますので。それと、あなたに名前で呼ぶことを許可した覚えはありません。気をつけてください」

「えっ……」

挨拶を遮られた上に注意されて、サラの笑みが消えた。

国王がサラを王太子妃にしたがっているので、ジェラールからも丁寧に扱われるものと思っていたのかもしれない。
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