没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
たしか聖女の召喚術を記した古い本を研究のためと偽って借りにきた教授がいて、その人が所属する大学を経営しているのがインペラ宰相だと言っていた。

(ジェラール様は怪しんでいらしたのよ。ということはもしかして、聖女を召喚したのはインペラ宰相なのかしら。でも、本のそのページは塗りつぶされて読めないと言っていたし……)

オデットは勘がよくないので正解にたどり着けそうになく、考えているうちに聖女の紹介は終わってしまった。

(あ、日本の話は出たかしら。聞きたかったのに)

壇上の三人が席に着くと、ピアノ演奏が心地よく響く中で優雅な晩餐が始まった。

落ちぶれているとはいえオデットも一応貴族令嬢なので、テーブルマナーは両親に教わっている。

それでもスムーズに口に運べないのは、出された料理にいちいち感動するからだ。

(このテリーヌ、魚介が何種類も入っていて旨味に溺れそうになるわ。飾り切りされた野菜は可愛くて、かかっている美味しいソースは一体なにで作られているの? 前菜だけで三皿もあるなんて贅沢。田舎の家族とブルノさんやルネ、ロイにも食べさせてあげたい)

「オデット、食事を楽しんでいる?」

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