契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

　非常口などを念入りに確認し、お客様を出迎える。幸いなことに金城さんとは担当するクラスが違い、ほとんど顔を合わせることはなかった。

　無事に鹿児島に到着した後も、金城さんは私には見向きもせず、先輩たちと空港の外へ昼食を取りに出ていった。

　いつもだったら私も先輩と一緒にランチをしに行くところだけど、当然ながら誰にも誘われなかったし、私からも声をかけることはできなかった。

「どうしようかな、空港内で済ませちゃおうかな」

　外に行って金城さんに鉢合わせする可能性もある。

　空港内に出て、飲食店街へ向かおうとした時、背後から肩を叩かれた。
驚いてすぐさま振り返れば、いたずらが成功したかのように得意げな顔をした館野キャプテンがいた。

「びっくりした？」

「はい、とってもびっくりしました」

　いまだに心臓はバクバクしているほど驚かされた。

　言葉に棘を生やして言ったら、館野キャプテンは安心したように目を細めた。

「三階に黒豚メンチとカレーが最高にうまい店があるんだ。よかったら一緒にどう？　奢るよ」

「いいんですか？」

「もちろん。可愛い鮎川ちゃんになら、喜んで奢らせてもらうよ」