春恋
「出来ました」

シーンと静まり返った店内にオーナーの声が響き渡り私の前にカップが置かれた。

「これ…」


桜だと思うけど四葉のクローバーにも見えて言葉に詰まった。


「一応、桜です」

カウンター越しに苦笑いしながら私の前に立った。

「あの時の事思って頑張ってみたけど下手ですよね」


あの時。
初めて逢ったプラットフォームで見た桜を思い出して作ったと言う事だろう。


花びらはふにゃふにゃ。
不格好ではある。
でも…


「今まで貰った花の中で1番綺麗です」


心底そう思える。
涙が溢れそうで答えながら上を向いた。


「この間の答え分かりました？」


掛けられた言葉に真っ直ぐ彼を見ると堪えていた涙がぽろぽろ溢れてしまう。


「…わ、私、本当にすみません。」


言いたい事は山のようにあるのに言葉が出ず下を向いた。


ポンポン


大きな手が私の頭を優しく撫でる。
ゆっくりで良いよと言われてる感じで涙がとめどなく流れて泣き止むまで彼は黙ったまま頭を撫で続けた。
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