ゆっくり、話そうか。
二度と告白しないと決めたのに、やっぱり太りすぎた恋心には勝てなかった。

「私、日下部くんが好きやってん、だからずっとどんなこと言われても、その、最後まで見届けてるって決めててん」

だからめを逸らさなかった。
逃げたくなかったから。
どの瞬間の日下部も、自分に向き合ってくれている事実だったから。

「過去形?」

「なに?」

質問の意図が分からず、こ首をかしげて訊き返す。 

「日下部くんが好きだった、これって、過去形だよね」

意地悪に言葉尻を拾われた。
しかしそんなふうに拾われたままでは、やよいの気もすまない。

「違う。過去形やない」

「今も?」

「今も」

うなずいて答える。
絶対、勘違いされたくない気持ちだったから、想いも視線も逸らせることなく届けたかった。
安心したように笑った日下部が、「よかった」と呟く。

「俺、恋愛なんてくだらないと思って、一生誰かに感じないと思ってた。万が一感じても一ミリだってやるもんかって思ってた。一生一人でいると決めてたし子供なんてつくらないと誓ってた。いつ不幸の遺伝子が悪さするかもしれないしね。だから君への想いも絶対認めないつもりだった。自覚してもぶつけないって決めてた。君を傷付けたくなかったから。それに、勝手に寄ってきては抱きついたりしてくる人とかいて、それをあの時みたいに君が見て同じことを繰り返したくもなかったし、何がスイッチで親と同じ道を辿るかもわからなかったから…。だから、君を諦めるつもりだった」

日下部の方こそじっとやよいのめを見つめて、身動き取れないほど拘束する。

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