ゆっくり、話そうか。
指についたきな粉も念入りに払って。

「ん、やろか」

「てか、もう作ってよ」

拗ねた表情とも取れるクール感がやよいの恋をくすぐった。

「はい、じゃあこれの先っぽ噛んで?噛み方でもだいぶ違うし、噛まん方がいいときもあるし、そういう加減はいるよ?」

自分にはできて日下部にできないという優位性に、少し気分が
い。
完璧に鳴りそうな綿毛のタンポポを探して種を飛ばし、ちょうどいいところでちぎって渡す。

「綿毛の方がよく鳴るの?」

「さぁどうやろ。関係ないかな?ただ咲いてるのはまだこれから種つけるからお役目あるやろうし、綿毛は飛ばした後枯れるだけやからどっちか言うたら綿毛の方が食物連鎖に手を貸してるっていうただの自己満足」

より罪悪感の薄い方を選んだとは言い出せなかった。
へーぇと漏らした日下部は、白い液がまだみずみずしく残る茎を眺め、指で転がしている。

「それ貸してよ、園村さんのよく鳴ってるやつ」

「は?これ?」

咥えたタンポポの笛を指差されてあたふたするやよい。

「そう、園村さん吹いた方」

なんっ、
なん言うてんのっ、この人っ。

友達やったらまだしも、いや、友達だったとしても異性に対しては盛大な誤解を及ぼしかねない。
仮にも相手はこの前フッた相手だ。
しかも告白もどきな発言を昼間にぶちかました、恋愛感情プラスの女子。
口からタンポポの笛を外したやよいは、手のひらの中で握り隠した。

「え、嫌、絶対嫌。絶対無理、あかん、ダメです。間接キスなるから絶対あげません」

「はぁぁっ?」

間接キス発言に日下部が吹いた。

< 88 / 210 >

この作品をシェア

pagetop