エリート警察官は彼女を逃がさない

「こんにちわー。今日も野菜取りに……あれ?」
「こうちゃん……」
この空気に気づかずに入ってきてしまった彼に同情しつつ声をかける。幼馴染であり、近くで地元の野菜を使ったレストランを経営している、葉山紘一はこのただ事ではない空気に固まった。

「なに、こいつなの? 美緒の相手」
身も蓋もない言い方で言うと、こうちゃんまが交戦的な視線を彼に向けた。
三つ上の彼は私にとって兄のようなもので、父と同様に一緒に怒ってくれていた。

さらに状況が悪くなってしまったことにハラハラしつつ、私は口を挟む。
「あの、征爾さん、今更どうしたんですか?」
「許してもらうためにきた」
顔を上げて久しぶりに征爾さんと視線が絡みある。それだけで私の胸はキュッと締め付けられる。
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