エリート警察官は彼女を逃がさない
そして引っ越し当日、臨月の私は結局何もさせてもらえず、あっという間に新しい家にいた。

手早く作業をしてくれたスタッフに感謝しかない。

「ここならセキュリティもばっちりだから」
引っ越し終わった家を見ながら征爾さんは満足そうに微笑む。
かなり広いリビングはモダンなインテリアで統一されていたが、その一角にはかわいいイチゴのイラストがついたおもちゃや、ベビーグッズが揃えられている。
大きな窓ガラスの向こうにはテラスがあり、その向こうの広い庭にはグリーンの芝生、滑り台やブランコと至れり尽くせりだ。

「ここ喜んでくれるといいな。茉莉」
征爾さんは穏やかに微笑みながら言う。

産まれる前からなぜか茉莉と二人で呼んでるお腹の中の赤ちゃん。

「パパは今からおもちゃもいっぱい用意してるよ。茉莉」
私が声をかければ、元気に蹴り返される。私のお腹に触れていた征爾さんと顔を見合わせた。

その時、いきなり腹痛に私はうずくまる。

「あっ……」
「美緒! 産まれそうか!?」
「はい」
痛みに耐えつつ、私は征爾さんと一緒に病院へと向かった。
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