エリート警察官は彼女を逃がさない
二階堂家の懇意にしている総合病院。
私は妊娠中、そこで見てもらっていた。豪華な部屋に恐縮しつつも個室で痛みを耐える。

「美緒、大丈夫か?」
いつも凶悪なテロリストと戦っていた人とはおもないほど、部屋の中でオロオロして私の腰をなでたり、水を飲ませたり甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。

「大丈夫ですから、征爾さんも少しは……いたーい!」
休んでと言いたかった私だが、激痛に襲われて私は叫び声を上げた。

「美緒、どうしたら痛くなくたるんだ?」
「おい、いい加減にしろよ」
静かに聞こえたその声に、征爾さんが振り返る。

「小笠原、おい、どうにかしろ。美緒がこんなに苦しんでるんだぞ」
征爾さんの友人でもあるという、外科医の小笠原先生と、私の担当の美香先生が入ってくるのが見えた。

「俺は専門外だ。何もできん」
「じゃあ、何をしに来たんだ」
コントのような二人のやり取りに、痛みが引いた私はつい笑ってしまう。
しかし、それがまた痛みにつながる。
「お前の弱みを握れるチャンスだからな」
仲がいいのか悪いのかわからないが、征爾さんがけがを負った時執刀してくれたのも小笠原先生だ。
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