あの夜を閉じ込めて
「お疲れ様でした。とても綺麗なグラスになりましたね」
「はい。ありがとうございます!」
私のせいで作業時間は少し長くなってしまったけれど、無事にバースデーグラスを完成することができた。
「グラスは二日かけて冷まさないといけないので、後日取りに来ていただくか、郵送になるんですが、どうしますか?」
「あ、そっか。受け取り……」
「函館にはどのくらい滞在予定ですか?」
「明日には帰る予定なんです……」
「でしたら郵送のほうがいいですね。手続きをする紙を持ってくるので座って待っていてください」
「は、はい」
ひとりきりの工房は静かだった。いつの間にか窓の外が薄暗くなっている。さっきまではパラパラと舞ってるだけだった雪も本格的に降り始めていた。
――『俺、望美と家族になりたい』
なにかをしていないと、すぐにあの人との日々ばかりを思い出してしまう。
夜景の見えるレストランで婚約指輪を渡された日は、死んでもいいと思ったくらいに幸せだった。
なのに、どこで崩れてしまったのか。一体いつから裏切られていたのか、それすらもわからない。
彼のことを信じ切っていた。疑うという思考が、そもそもなかった。だから、今でも嘘なんじゃないかと思う。膝の上に置いてある手を強く握った。
「お待たせしました」
そうこうしてるうちに、冬夜さんが戻ってきた。