あの夜を閉じ込めて


「今夜はホテルに泊まるんですよね? 時間とか大丈夫ですか?」

「……あ、泊まるところ!」

今さら重大なことを思い出して、椅子から立ち上がった。スマホの画面を確認すると、時刻は十八時になろうとしていた。

「まさか決まってないんですか?」

「いえ、本当はジェント・ラトンホテルに泊まるはずだったんですが、うまく予約が取れてなかったみたいなんです。この辺に他のホテルってありますか? あ、ホテルじゃなくても一泊できるところならどこでも……」

「ここら辺はジェント・ラトンしかないですよ。それに今日はこれから吹雪(ふぶ)く予定なんです。函館駅に戻ったとしてもビジネスマンがこぞって周辺のホテルは取ってるだろうし、これから探すのは正直厳しいと思います」

「え、じゃあ、野宿しかないですか?」

「いや、北国なめてますか? 普通に凍死しますよ」

「どうしたら……」

もう、私ってば本当にバカ……。吹雪になるとホワイトアウトになってしまうようで、タクシーも走らないそうだ。

「じゃあ、一晩ここに泊まりますか?」

「……え……?」

冬夜さんからの提案に、私はわかりやすく目を見開いた。

「俺もここに泊まることがあるんで、奥に寝る部屋があるんですよ。部屋って言ってもベッドが置いてあるだけなんですけど」

「そ、そんなそんな、お気持ちだけで十分です!」

「ですよね。綺麗な部屋じゃないですし、こんなところに泊まるなんて抵抗だらけですよね」

「あ、ち、違います! 抵抗とかじゃなくて、その……。私が泊まったらご迷惑になるだろうし、冬夜さんはどうするのかなと思いまして……」

「元から夜通しで仕事をする予定だったんで大丈夫ですよ。展示会が近いんですよね」

「展示会……ですか?」

「はい。三カ月後に個展があるんです」

「個展、すごい!」

ということは、もしかして冬夜さんは有名なガラス職人なんだろうか。工房にあった作品も素敵なものばかりだったし、ここにも作りかけのガラスがいくつか確認できる。

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