あの夜を閉じ込めて
「今まで工芸品の大型展覧会には参加したことがあるんですが、個展は初めてなんです。だから今はそのための作品づくりをしてる最中でして……」
「え、ということは私って、ものすごく冬夜さんの邪魔をしてしまったんじゃ……。本当にごめんなさい!」
「いえ、煮詰まってたんで逆に助かりましたよ」
冬夜さんが柔らかく微笑んだ。
日常生活において、グラスや食器は毎日使っているけれど、そのデザインを誰が生み出し、誰の手によって作られたものなのか、なんて考えることはなかった。
私も、冬夜さんが作ったガラスに触れてみたい。そんな願望をつい声に出してしまったら、店にあるガラスなら触ってもいいと言ってくれた。
工房からまた入口近くの部屋へと移動する。先ほど見た工芸品の他に、イヤリングやフォトフレーム。ステンドグラスのオーナメントなどが置かれていた。
そのすべてが冬夜さんの作品。デザイン、形、気泡の入り方、ふたつとして同じものはない。
世界でたったひとつのものを作り出す冬夜さんは、魔法使いなんじゃないかと本気で思った。
「……全部、素敵だ」
息を吐くように漏れた独り言は、彼と彼が手掛ける作品に向けての感想だった。