あの夜を閉じ込めて


冷たい風が頬を撫でる。同時に肝も一気に冷えていた。

振り返れば、予約を取ったのはひどく酔ってる時だった。韓流ドラマを観ながら、こんな一途な男はいないだろとツッコみ。だけど世の中にはいるかもしれないと夢見た。だんだん虚しくなってきて、やけ酒を煽り、その勢いで函館行きを決めた。

……私のバカ。なにやってんのよ。思わず、その場にしゃがみこむ。

早く泊まれる場所を探さないといけない。だけど、スマホを取り出す元気が出ない。足にも力が入らない。

意地でも楽しんでやろうと思っていた旅。本当はちっとも癒えない心を神様に見透かされているような気がした。

すると、風に吹かれてなにかが飛んできた。

目の前に落ちたのは、地図つきのチラシ。誰かが踏んだであろう靴跡を手で(はた)いた。

末広(すえひろ)ガラス工房】

そこにはガラス作り体験の案内とともに、美しいガラス工芸品の写真が載っている。

先ほど行った赤レンガ倉庫にも、ガラス製品を扱う店が入っていた。チェックインの時間が迫っていたからゆっくり見ることはできなかったけど、ガラス作り体験には前々から興味がある。

地図を見る限り遠い距離じゃなかったので、少しだけ立ち寄ってみることにした。


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